本記事は全10回シリーズ『かつら屋さんのAGA入門』の第二回です。

同世代の友人と飲みに行ったとき、ふと相手の髪を見て「なんであいつは全然大丈夫なんだろう」と思ったことはありませんか?
同じような生活をしていて、同じように仕事のストレスを抱えているはずなのに、自分だけ薄毛が進んでいる気がする。そんなモヤモヤを感じている方も少なくありません。
実はAGAの発症には、生活習慣だけでは説明できない要因が深く関わっています。
【かつら屋さんのAGA入門】第2回では、「遺伝」という切り口からAGAの原因を見ていきます。
AGAの遺伝的要因:家系との関係
薄毛で悩み始めるとき、まず最初に思い当たる要因として「遺伝」が挙げられます。
「親父が薄毛だから、ゆくゆくは自分もハゲるだろうな・・・・」
「物心ついたころにはおじいちゃんがツルツルだった・・・」
「帰省などで大勢集まると髪の毛が薄い親戚が多い・・・」
などなど、自分の家系について気にする方は少なくありません。
実際、AGA(男性型脱毛症)には遺伝的要因が大きく影響しており、ある研究ではAGAの遺伝率は80%以上とも報告されています。
では、具体的にどのような遺伝子がAGAの発症に関わっているのでしょうか。
AGAには母方の遺伝子が強く影響する?
男性型脱毛症(AGA)は多遺伝子疾患と言われており、単一の遺伝子だけが原因ではなく、複数の遺伝子が関係し合うことで、AGAの発症しやすさが決まると考えられています。
中でも、X染色体上にあるアンドロゲン受容体(AR)遺伝子は、AGAの発症しやすさに関係する重要な遺伝子の一つとして知られています。男性の場合X染色体は母親からのみ受け継ぐので、「AGAには母方の家系が強く影響する(薄毛は母方の祖父から遺伝しやすい)」という説が広まりました。
この説は実際に科学的な根拠のある説だと言えます。

しかし、AGAが進行するすべての要因を母方の遺伝だけで説明することはできません。父方の遺伝子の影響が全くないのか?というと、決してそうではないのです。
常染色体にもAGAに関わる遺伝子が存在する
男性は母親からX染色体を、父親からはY染色体を受け継ぎます。ここで少し遺伝の話を整理すると、人間の染色体は、全部で23対(46本)あります。そのうち、性別を決める「X染色体・Y染色体」を除いた残りの22対(44本)を常染色体と呼びます。常染色体は、父親と母親からそれぞれ1本ずつ受け継ぎます。
常染色体上にも、AGAの発症しやすさに関係する複数の遺伝的な要素があることが分かっています。
また第三回の記事で詳しく説明する予定ですが、AGAの要因となる酵素「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」の活性度に関わる遺伝子は、常染色体上に存在します。
そのため、母方からの遺伝のみではなく、父親や父方の祖父、その他の親族に薄毛の方がいる場合も、AGAの発症しやすさに影響する可能性があります。
| 遺伝的要因 | 受け継ぎ方 |
|---|---|
| アンドロゲン受容体の感受性 | X染色体(男性は母親から受け継ぐ) |
| 5αリダクターゼの活性 | 常染色体(父母の両方から受け継ぐ) |
必ずしも「親が薄毛=自分もAGA」ではない
「じゃあ、父親も母方の祖父も薄毛なら、自分も必ずAGAになるの?」と思うかもしれません。
しかし、AGAはそれほど単純なものではありません。AGAには複数の遺伝子が関係しているため、同じ家族の中でも、薄毛になる時期や進行の程度には違いがあります。
「父親は薄毛だけど、自分はまだ大丈夫」という人もいれば、「家族に薄毛の人がほとんどいないのに、自分は薄くなってきた」という人もいます。
つまり、家系に薄毛の人がいることは、AGAの発症しやすさを考える一つの手がかりにはなりますが、それだけで将来の髪の状態が決まるわけではありません。
遺伝的な体質は自分で選んだり変えたりすることはできませんが、その体質が実際にどのようなホルモンの働きを通じて薄毛として現れるのかを知ることで、対策の選択肢は見えてきます。
次回は、AGAの発症や進行に関係する「男性ホルモン」に注目します。
テストステロン、5αリダクターゼ、そしてDHT(ジヒドロテストステロン)。
この3つがどのように関係して、髪の毛に影響を与えるのかを、できるだけ分かりやすく解説します。
まずは自分のことを知ることが対策の第一歩
髪の毛の悩みは相談しにくいものですが、人に話を聞くことや自分の悩みを打ち明けるだけでも心の持ちようが随分と変わったりもします。
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